悪夢

なぜか生き残ってしまう。

デ・ジャ・ブ 3

(2300字)

篠田登が会社役員殺害肛門ほじくり事件に執拗にこだわるのには特別な理由があった。篠田は犯人に車で追突されたのであり犯人の顔を見たのであり犯人に殴られ車のキーで頭皮をえぐられたのだった。車のキーか篠田の頭にあと少し鋭角に接触していたのならキーは頭に突き刺さり篠田の死は確実だった。病院で篠田は追突された現場からほど近い地点で会社役員殺害肛門ほじくり事件が発生していたこと、篠田の車に追突した車は殺害された会社役員のものであったこと、乗り捨てられていたその車の中から会社役員の血とうんこが付着したゴム手袋が発見されたこと、を知った。篠田はすぐに仕事復帰したが中古タイヤの集積場の放火事件に回された。裕紀殺害を視野に入れていた吉樹は逃走中の車内で裕紀から財布を落とした、ホームセンターの駐車場に戻ってくれと言われ絶好の機会を得たと車をそっちに向けた。車をホームセンターにほど近い路肩に止め駐車場の隅でコンクリートの塊を持って待機していた横溝は裕紀が殺害されるのを見た。吉樹は車のキーを裕紀の頭に突き刺し、抜くと、突き刺し、抜くと、突き刺し、抜いた。朝一番に出勤したホームセンターの主任が駐車場に滞留した血液と裕紀の死体を見つけた。尻の穴に生け花された自身の姿が映し出されたデジタルカメラの液晶画面を見ている重信政子に「何を考えてる?」と砂袋は聞いた。政子は液晶画面に目をやったまま「あなたには思いもよらないこと」と言った。「変態女」と砂袋はうれしそうに声をつくって言った。「何だと?」と政子も声をつくって砂袋に襲いかかった。ラブホテルのベットが軋んだ。笑い声が響いた。

対決せざるを得なかった。横溝は5メートルほど後方でコンクリートの塊を持って立っており、裕紀を殺害した砂袋が振り返り目が合った。砂袋(車のキー)VS.横溝(コンクリートの塊)。頭を打ち砕かれた砂袋はその場に倒れた。横溝は走って逃げた。自分の車に向って駐車場を駆け抜けホームセンターを回り込み道路に飛び出した。篠田は突然ヘッドライトに人間が飛び出してきて急ブレーキをかけたが遅かった。人間はボンッと吹き飛んだ。横溝は即死だった。刑事の篠田登は会社役員殺害肛門ほじくり事件は殺害された村瀬正男の自作自演ではないかと疑いを抱きはじめていた。林道に車を止めると村瀬は裕紀と吉樹に外に出るよう命令し、裕紀に吉樹をフェラチオするよう、吉樹に裕紀にフェラチオされるよう命令した。裕紀は吉樹のズボンを脱がせフェラチオした。村瀬は隠し持っていたバタフライナイフで吉樹の首をスパッと切った。吉樹の喉から血が噴き出し、吉樹は仰向けに倒れた。髪をつかまれ喉を天に向けられた裕紀の首を村瀬のバタフライナイフが横切った。裕紀の喉から血が噴き出した。村瀬は二人の血が抜けるのを待ち足首にからまった吉樹のズボンとパンツを完全に脱がすと仰向けに寝かせ直し、裕紀の下半身も裸にするとうつ伏せに吉樹の上に重ねた。警察署に匿名で投稿されたビデオテープには犯行の一部始終が記録されていた。澤田は林道脇の原っぱに野外セックスの盗撮目的で隠れていた。夜間の赤外線撮影のため映像は鮮明ではなかったが村瀬が逮捕された。車が走り去るとビデオカメラを止め、たった今殺害された二遺体に近付いた。女を男から引き離すとズボンを脱ぎ屍姦した。澤田は裕紀の中で射精した。女を元の位置に戻して退散した。ビデオテープに村瀬が裕紀を屍姦する場面はなかった。首を切られた男女が重ねられるところでブツッと切れていた。村瀬は屍姦の事実を認めた。コインロッカーの一千万円は村瀬にもどこに行ったのか分からなかった。

砂袋は「コインロッカーに金など入れるな」と言った。車の後をつけるバイクがあった。銀行から村瀬が大金を下ろすのを見ていた。強奪するチャンスをうかがっていた。一千万円はコインロッカーに仕舞われた。尾行者はピッキングができる仲間を呼び一千万円入りのボストンバッグを難なく盗み出した。「ではどうしたらいいのか?」と村瀬は聞いた。砂袋は薬局で手頃なサイズの瓶を手に入れ、中身を出し、瓶の中に村瀬を殺したのは裕紀と吉樹だと書いた紙を入れ蓋をして、それを村瀬の肛門から入れる、という案を出した。ボストンバッグは車のトランクに入れておく。それは駄目だと村瀬は言った。村瀬は村瀬がボストンバッグを裕紀と吉樹の知らない場所に隠し、ボストンバッグの在り処を記した紙を瓶に入れ蓋をして村瀬の肛門から入れる、という案を出したが、その案は村瀬自身と吉樹双方に反対された。村瀬が車のキーをポケットに入れるのを吉樹は見た。下ろした金を入れたボストンバッグを抱えて戻ってくるのを見た。人はたくさんいた。吉樹はポケットからバタフライナイフを取り出すと車外に出て村瀬に接近し村瀬を刺した。ボストンバッグと車のキーを奪い車に戻ると裕紀と逃走した。村瀬は自宅で自殺した。首吊り自殺。遺書らしきものがあった。「賢者よ、死者の肛門をほじくれ」村瀬の肛門にはコインロッカーの鍵が突っ込まれていた。コインロッカーの中から一千万円入りのボストンバッグが見つかった。ホテル・マーセラの306号室で裕紀は男が首吊り自殺するのを見た。報酬は一千万円だった。男は息絶えるとともに握りしめていた一千万円入りのボストンバッグを床に落とした。裕紀はそれを手にホテル・マーセラを後にした。電飾の美しさには目もくれず。