20 子供の領分・ミステリーサークル、もも

これはS君の小学校三年生の頃の話です。夕飯を食べ終えたS君は、テレビの前であぐらをかいていました。テレビを観ながら、何気なく視線を落としたS君は、あるものを目撃し、驚きのあまり絶句しました。あるもの、は短パンから伸びる自分の両脚の太腿の内側にそれぞれひとつずつ、左右対称にありました。それは、ミステリーサークル。正確には、直径5センチ程の青黒い円形のアザです。S君の経験では、アザは、硬いものに強くぶつけた時、あるいは、硬いものが強くぶつかった時に、時間をおいてできるもので、痛みと不可分なものです。しかし今回のアザは、硬いものに強くぶつけたわけでも、硬いものが強くぶつかったわけでもなく、また痛みもないまま、突如出現したのです。まさにミステリーサークル。不可解としかいいようがありません。
S君は分からないことがあると、誰かにすぐ尋ねるタイプではありません。まずは自分で考えます。ですがそんなに集中力があるほうではないため、少し考えて分からないと保留して別のことをします。今回もそうでした。S君は最近覚えたばかりのカエル倒立をしました。その時、ミステリーサークルの謎が解けたのです。
カエル倒立をご存知ない方のために説明すると、カエル倒立というのは、体操の一種です。まずしゃがみます。それから両手を肩幅くらいの間隔をあけて地面につきます。右脚を右腕の外側、左脚を左腕の外側にポジショニングします。すると右肘は右脚の太腿の内側に、左肘は左脚の太腿の内側に当たります。そしてその状態をキープしたまま両肘を軽く曲げつつ身体を前に倒します。両腕に負荷がかかり、両肘は両脚の両太腿の両内側を強く圧迫します。さらに前傾姿勢になると、ついに両足は地面を離れます。この、両足が地面を離れた状態を、バランスをとりながらキープするのがカエル倒立です。S君はこれをやりすぎたために、両太腿の両内側に、ミステリーサークルを出現させてしまったのでした。