21 子供の領分・赤鼻譚

S君の鼻の頭は赤い。
数年前に凍傷を負ったからです。冬山で遭難したとかそういうわけではありません。ただ単に寒いところにずっと(連日長時間)いて、尚且つ鼻のケア(かゆくなくてもたまに触って血行を良くするなど)を怠ったからです。春がくれば元に戻ると思っていたのですが、冬より範囲は狭まり、色も薄くなったとはいえ、春になってもS君の鼻は依然赤いままでした。
それからずっと赤いのですが、十二月になり寒さが増してきた今日この頃、S君の鼻の赤さはいよいよ本格化(薄いピンクから真っ赤っ赤へ)してきました。そんな折りS君は自分の鼻の赤さに関する物語を思いつきました。それは次のようなものでした。
S君の前世はトナカイさん。トナカイ界でも、クリスマスの日、サンタのおじさんに「暗いよ道はピカピカのお前の鼻が役に立つのさ」と言われ、大役を任された「赤鼻のトナカイさん」の話は有名で、S君も母親から聞いて知っていました。S君の夢は、いつの日かサンタのおじさんを背中に乗せて、クリスマスの日に、世界中を飛び回ることでした。夢を叶えるため、S君は鼻を赤くする努力を惜しみませんでした。しかし夢を叶える前に死んでしまいました。そして人間に生まれ変わりました。この時期(クリスマスシーズン)になると、S君のもともと赤い鼻はより一層赤くなるのですが、それはそんなトナカイ時代の名残りなのです。