48 サードマン、悪いサードマン、そして、なりすましサードマン

苦境の時に現れ、励まし、導いてくれるというサードマン。サードマンに助けられた、という人は実に多い。テストの答えが分からない時、サードマンが現れ、答えを教えてくれた、手が届かないところが痒くなった時、サードマンが現れ、かいてくれた、ジャムの蓋が硬くて開けられなかった時、サードマンが現れ、開けてくれた、森で迷子になり途方に暮れていた時、サードマンが現れ、道を教えてくれた、マラソン大会で苦しくて倒れそうになった時、サードマンが現れ、励ましてくれた、お風呂で眠ってしまった時、サードマンが現れ、起こしてくれた、などなど、体験談は枚挙に暇がない。サードマンは極端に良いヤツで、助けた後に、金銭を要求したり、エッチなサービスを強要したりすることもない。また、いつの間にか現れ、いつの間にか消えている、超クールなヤツでもあるのだ。

しかし私は最近、悪いサードマンの噂をよく耳にする。悪いサードマンは、やはり人が苦境に立たされた時に現れるのだが、励まし、導くことはせず、騙し、蹴落とすので注意が必要だ。悪いサードマンは、例えば間違った答えを教えたり、間違った道を教えたりするようで、悪いサードマンに騙され、赤点をとったり、遭難して死にかけるといった被害が出ているらしい。

また、家出少女が泊まるところもなく彷徨っている時、悪いサードマンが現れ、寝床の提供という甘い蜜をちらつかせ、少女を自宅やホテルに連れ込み、陵辱した、といった類の噂が、もっとも典型的な「悪いサードマン物語」として語られているのだが、これは明らかに悪いサードマンではなく、なりすましサードマンの仕業である。悪いサードマンと、なりすましサードマンのもっとも大きな違いは、前者か「極端に良いヤツ」である本物のサードマン同様、人間ではないのに対し、後者は人間であることだ。なりすましサードマンから身を守るのは、意外と難しい。苦しい時、そいつがなりすましサードマンであると分かっていても、人はつい自分を騙してでもスーパーヒーローの出現を信じたくなるものであり、なりすましサードマンは、そんな人間の弱さにつけ込んでくるからである。もっとも分かりやすい、身近ななりすましサードマンの例としては、友情や思いやりからではなく、あわよくば交際できないかとの下心から、失恋して傷心の友達を慰める、なりすましサードマンを上げたい。