5 韻句はじめました

韻句には俳句のように、いくつかのルールがあります。

1、文字数に制限はありませんが「一息で読めるくらいの長さ」が理想的です。しかし実際に声に出して読む時は一息で読む必要はありません。それによって句の持つ情感が損なわれては本末転倒だからです。
2、季語は必要ありませんがテーマを四回以上反復・変奏する必要があります。韻句の韻句たるゆえんがここにあります。

実際の作品をご覧になって頂ければ一目瞭然ですので、ここで私の韻句をいくつかご紹介させて頂きたいと思います。
まずは「らい」をテーマにした韻句から。

・来園者に盥(たらい)を配る謎の依頼に隠された狙い

こんな感じです。
「さい」をテーマにこんな韻句も詠みました。

・色彩豊かな奇才のキャンバスにはどんくさい犀(さい)が満載

どうでしょうか?
「やみ」だとこうなりました。

・心の闇に降る雨は止み病み衰えた悩みに母の嫌味
そして「わり」ではこうなりました。

・偽りの関係に終わりを告げても変わりない日常はお断り

こんな感じですね。
最後は韻不足の韻句です。テーマは「ばり」です。

・何の気張りもなくロープを縛り自ら下ろす人生の帳(とばり)

皆さんもぜひ、気軽に挑戦してみてください。

6 人間便(仮称)について

運送各社が来年度(平成25年度)から導入を検討している人間便(仮称)についての情報を入手しました。
人間便は主に2種類の人間を対象にしているようです。(1)生きた人間(2)死んだ人間です。
(1)に関しては一人での移動が困難な幼児や老人の輸送が見込まれています。紛失案件を防ぐために被輸送者はロープなどで手足を縛られることになるようです。
(2)に関してはロープなどは必要なさそうですが別の問題があります。もたもたしていると悪臭を放つ恐れがあるため迅速な輸送が求められます。しかしこの点は生鮮食品と同じなわけですから運送各社にとっては難しいことではないでしょう。
来年の今頃にはトラックの荷台に死体やロープなどで縛られた幼児や老人が積み込まれている、という光景が当たり前の光景となっているかもしれません。

7 変な文章を解読する

YouTubeの「斎藤和義JUMP ドカドカうるさいR&Rバンド」のコメント欄にSintroouという人の変な文章が連続して投稿されています。こんな文章です。

清志郎さんはどんなうたたくさん作られた方なんだろう。たろうさんうたできたんですか?楽しそうだなあ。この雰囲気。

和義さん。みなさん。ストレスがとうとう家事やる気がでなくてできない感じになりました。(キャンセルキャンセルキャンセル)実家にお世話になり
親子げんかになりとどめがたろうさんが古川にお嫁さんを探しにいき「またきてね~♪」ハートマーク。

手さわったらごつごつしてました~♪仕事とはいえ最後のおちにがっくり。買い物にもいく気も料理も。それなのに仕事とはいえ嫁探しにまたきてね~♪もうつかれた。だから限界だあ
。(泣またきてね~♪あっそ。

もはやわたしは何者なんだろう。
たろうさんは追いかけられて家族げんかまでして子供の世話もろくにできないわたしの気持ちわかるかな(つかれた…。)
和義さんたろうさん今なに考えてますか?

たろうさんのグルグルパーニャ思えばがんばらないといけないけど子供がいるから。つかれていては子育てが…。

正直わけのわからない文章ですが出鱈目に書かれたものではありませんでした。この人は歌手の森山直太郎さんの大ファンで森山直太郎さんの動画のコメント欄にはたいてい何か書き込んでいます。「たろうさん」というのは森山直太郎さんのことで間違いないと思います。「JUMP」と「ドカドカうるさいR&Rバンド」は忌野清志郎さんの曲ですので「清志郎さん」というのは忌野清志郎さんのことでしょう。(前者は作詞:忌野清志郎 作曲:三宅伸治。後者は作詞作曲:G忌麗)この変な文章が投稿されたのは二ヶ月前。二ヶ月前の七月二日と九日、二週にわたってNHKで「鶴瓶の家族に乾杯」がゲストに森山直太郎さんをむかえて放送されています。番組内で森山直太郎さんは飛騨古川を旅したようです。そして最後に出てくる「グルグルパーニャ」は森山直太郎さんの歌の題名です。

8 雨月物語・前世の恨みを晴らしハレバレ

女盛りの白峰法子さん(三九)は四日、高層マンションの隣人を甘くて黒い宝石・チョコレートを餌に自宅に招き入れ、猟奇的に殺害した件について、坂出市内のホテルで記者会見し、「前世の恨みを晴らしてやった」とハレバレとした表情で語った。
法子さんによると、法子さんは前世で、言葉にできないようなひどい辱めを、今生被害者となった隣人の沢嶋良子さん(四十)に受けた。具体的な内容については、「話せる時がきたら話す」としている。その時、聞いてくれる人が法子さんのそばに居てくれることを願うばかりだ。
法子さんの夫のロバートさん(四一)は今回の件で「マンションの資産価値が下がるのは確実」と禿頭を抱えている。これには一人息子の実君(九)も「おれも将来禿げるのかな」と今から心配している。実君にとってはあまり喜ばしくない事実だが、ロバートさんの家系は代々禿頭を輩出しているという。実君もあまり遠くない将来禿げるだろう、というのが大方の見方だ。
被害者の夫の辰巻さん(四十)は「袖振り合うも他生の縁とは言うが、まさか女房が、前世で言葉にできないようなひどい辱めを、法子さんに加えていたとは」と驚きを隠せない様子で言葉を詰まらせ、「ともかく夫として、法子さんに謝罪したい」と口にするのがやっとだった。「自分がひどい目にあう前にやっつけてくれた法子さんに感謝することも忘れないでね」と付き添いの妹さん(三五)に助言されると、何度も大きくうなずいた。
その時、チリンチリン、チリンチリンと自転車のベルの音が、マンションの前の歩道を占拠して取材する私達の耳に快く響いた。前籠にスーパーの袋を入れた中年女性の自転車が、こちらに向かって来る。道をあけると、女性は顔を真っ赤に上気させ、私達には目もくれず、そこを通り抜けた。その女性に、どことなく良子さんの面影を認めた私達は、無言で遠ざかる彼女を目で追った。
良子さんらしき人物を乗せた自転車は、横断歩道の手前で地面を離れ、赤信号の歩行者用信号機を越えると、さらに高度を上げ、空の高みへと、ぐんぐん、ぐんぐんと昇っていった。

9 雨月物語・大五郎さんの悪い予感が的中

右目の下にホクロがない伊南村昇容疑者(二四)が十一日午前、加古川署に死体遺棄容疑で逮捕された。
伊南村容疑者は犯行を認め、おっちょこちょいで思い込みが激しく、また友情に篤い己の性格がどうのこうのと、取り調べに当たった警察官に取り乱した様子で早口でまくし立て、全然話についていけなかった警察官を苦笑させた。警察官は自身の聴取能力に問題があるのではないか、といった自己不信に陥ることなく、伊南村容疑者に落ち着くよう促した。
伊南村容疑者は深呼吸すると、しかしそれだけでは私がやったことの説明には不十分だ、とまたしても警察官には理解不能な、独り言めいた発言を垂れ流した。伊南村容疑者が二日前の夜の出来事を俯瞰し、分析しようして上手くいかず、むなしくあがいていると察した警察官は、伝家の宝刀「両の眼(まなこ)から父性横溢」を用いて、パニクる魂を鎮めようとした。
規定枚数をオーバーすると査定に響く上、伊南村容疑者ではちっともラチがあかないので私が事件をまとめると、殺害されたのは、猫背でない恵久美彩子さん(二二)。そして彩子さんの変わり果てた姿を発見したのは、虫歯がない棟田大五郎さん(二四)だった。
第一発見者の大五郎さんは、意識を失い昏倒しても大怪我を負わないように、彩子さんの亡骸のかたわらにしゃがみこみ、自身の携帯電話から伊南村容疑者の携帯電話に電話をかけた。伊南村容疑者は、詳しい話は何も聞かないまま、緊急事態であることだけを察し、自家用車で彩子さんの自宅、菊花レジデンス101号室に駆けつけた。
そこには頭部が血に染まった生々しい彩子さんの遺体と、凶器らしき金槌、さらには気絶して弛緩した大五郎さんの姿があった。その光景から、伊南村容疑者は瞬時に、大五郎さんが彩子さんを殺害したと早合点した。伊南村容疑者はまず、大五郎さんをおんぶして運び出し、車に乗せて自宅に引き返し、ベッドに寝かせると、一人で菊花レジデンスに戻った。
大五郎さんが目を覚ましたのは、それから約四時間後の翌深夜二時頃だった。大五郎さんは自分が誰で、今何時で、どこにいて、何をしているのか、しばらく分からなかった。ただ漠然と悪い予感がしていた。大五郎さんの悪い予感は的中した。その頃伊南村容疑者は、死体遺棄にはうってつけの場所を見つけ、大仕事を前に深呼吸していたのである。

10 雨月物語・階段から転落した女性が死亡

財団法人ソウシャル・サービス協会が運営する生活困窮者向け宿泊所「あさぢが荘」で四日午後三時十五分頃、同所に父親を訪問した女性(二二)が四階の廊下でくにゃくにゃに倒れているのを、顎にイボのある女性(五六)が発見し、笑った。
笑い声を聞き、駆け付けた窃盗等の前科のある男性(七一)が119番通報し、要領を得ない話ぶりながら、救急車を出動させることに成功した。窃盗等の前科のある男性は、「前科といってもずいぶん昔の話だ」という。
顎にイボのある女性は、沼田忍さん。沼田さんは真珠貝が真珠を育てるようにイボを育てている。買い手はまだ見つかっていない様子だが、そもそも沼田さんにイボを売る気があるか疑わしく、沼田さんの良い時も悪い時も見てきたイボを沼田さんが簡単に手離すとは考えにくく、ある専門家は「手に入れたければ、大金を積む必要があるだろう」との見解を示している。経営していた不衛生な飲食店は、五年程前に閉店している。
くにゃくにゃに倒れていた女性は、搬送先の病院で間もなく死亡した。警察の調べで、亡くなった女性は市川市在住無職、稲葉貴子さんと判明。貴子さんは同日午後、自宅でカップヌードルを食べ、「友達と遊んでくる」と母親に告げ、ヤフーオークションで落札したクロックスのサンダルをはいて出かけた。貴子さんは「あさぢが荘」に父親の善雄さん(五十)を訪ね、お小遣いをせびった。善雄さんは「俺は一文無しだ。金があればこんなところにいるはずがない」と突っぱねたが、貴子さんは信じなかった。
貴子さんの両親は三年程前に離婚している。善雄さんが二十年程勤めた会社を至極まっとうな理由で解雇された時期と重なっているため、善雄さんの失業と離婚が無関係だとは考えにくいが、詳しいことは分かっていない。
貴子さんは父親との会談が不首尾に終わった後、階段から転げ落ち、その際、頭の打ち所が悪かったため死亡したと見られている。警察は事故と事件の両面から調べる方針だが、「十中八九事故」らしく、「もし事件だったら?」との取材陣の質問に「もし事件だったらフルチンでお詫びしよう」と担当警官は白い歯と自信をのぞかせた。

11 雨月物語・中国国籍の李さんが夢を見た

滋賀県大津市に住む中国国籍の李魚さん(二八)は七日、急に土産が三つ必要になり、一階に土産物屋がある老舗料亭に向かって歩いていて、町内にうねるようにドイツとアメリカの国境線があることに気付き、驚愕する夢を見た。
土産物屋兼老舗料亭は、夢の中では李さんのアルバイト先であり、ドイツ側にあるが、風景も行き交う人々もそこが日本であることを示していた。国境線は隠されていたわけではなく、あまりに平然と存在していたため、誰の気にもとまらなかったのだった。
土産物屋兼老舗料亭につくと、オフの日に土産を買うために顔を出した李さんを、従業員たちは歓迎してくれた。李さんはお皿を三枚買うつもりだったが、女将さんや、お皿を作っている先生(四十代女性、料亭の二階でお皿作りの教室を開いている)に、李さんにお皿を売るのは申し訳ない、と言われる。どうやら値段ほどの価値はないらしい。そのまま手ぶらで帰すのは悪い、と老舗料亭のオーナー一族の重鎮(引退していて足が悪い)のおごりで、ラーメンを食べに行くことになる。その店はアルバイト仲間の女の子のお母さんがアルバイトしている店だった。
道中、オーナー一族の重鎮に豪雨が襲いかかる。ベテラン奉公人が、つっかえ棒のように自身の身体を主人の身体に押しつけて、悪い足の方に倒れそうになる主人を必死に押し返していた。肩を組めばいいのに、と李さんは思うが、口には出さなかった。雨が降っているのはこの場面だけだった。
川岸から川に魚を放っている光景を李さんは橋の上から目にした。慈善活動のように見えたが、魚の頭は切り落とされていた。頭のない魚は、川底に縦に一列に並んでいた。
帰り道で李さんは悟った。アルバイト仲間の女の子と会うことはもう一生ないだろう。ラーメン屋に女の子のお母さんの姿はなく、それは女の子が新しいアルバイトを見つけたことを意味していた。