第一室 ショートショート 目次

窓の灯り

H18-26(司法書士過去問集より)

人間便(仮称)について

マイブーム

色気で刑務所おくり機械

木村被告の手記

交番たより

「嫌われる人の特徴」6パターン

十二年ほど前に観た映画

両面テープ

ある静止画をめぐって

サードマン、悪いサードマン、そして、なりすましサードマン

私の友達

窓の灯り

(2200字)

「ナオト」と呼ばれても自分が呼ばれてる気がしない。「ナオト」は俺の名前だが、ほとんどあいつの名前だから。人気者の「ナオト」俺も同じ「ナオト」だと知らないクラスメイトもいて「あれ?お前もナオトなんだ」と驚かれることもあった。俺は「安藤」や「安藤くん」と呼ばれていた。

「Wナオト」でお笑いコンビ組もうぜ、とナオトから言われ断った。それでもナオトは「Wナオト」の呼称をクラスに広めようとした。結果、ナオト以外の口から「Wナオト」を聴くことはなかった。自然消滅した「Wナオト」俺が地味すぎてナオトと釣り合わなかったのだ。

だからって「ナオト」という呼び名を変えてくれと言うことはなかった。説明するのが面倒だし説明したらしたで相手をちょっと悲しい気持ちにさせかねないからだ。俺は「ナオト」なんだし、いつもいつもあいつを思い出すわけでもない。もっともその呼び名が完璧に俺を表していると感じることもないのだが。俺であり、俺でない。いいのだ、それで。むしろその方がいい。俺はもともと地味で暗い。だから俺の呼び名にあいつが入っているというのは、もうひとつの人格、人格だと大げさだけど要素が俺の中に入っているのと同じことで明るくて人気者のあいつに俺は助けられてる気がする時もある。

「どうだった?」とは訊かない。「お疲れさま」と言ってくる。「どうだった?」なんて訊かれたら、どう答えていいか分からない。「お疲れさま」だったら、「うん」と頷くだけでいい。ナミのこういうところが好きだ。けど「どうだった?」と訊かれたとしても、やっぱりナミのことが好きだ。気にかけてくれて、話を聴こうとしてくれて、俺が悲しいなら悲しいでその気持ちを共有しようとしてくれて、俺はうまく整理して表現できないかも知れないけど、話すことで肩の荷が下りるような気がするかも知れない。

「喪に服す」なんて難しい言葉、行為を俺に理解できるとも実践できるとも思わないけど、マンションに帰り、部屋着に着替えてソファに身をあずけてずっと動かずにいたあの時間、もちろん眠っていたわけでも努めてじっとしていたわけでもなかった。考えようとして考えていたわけでもなく思い出そうとして思い出していたわけでもなく考え思い出していたあの時間。テレビやネットや本がもたらしてくれる情報からあれほど遠く離れ、あるいは完全に遮断され、たったひとりで過ごしたあの時間。

ふと、あ、もうすぐ帰ってくると思い俺は立ち上がり部屋の灯りをつけた。何かを見るにはもう灯りが必要な時間になっていることにすら気が付かぬまま俺はナオトのことを考え、ナオトとのことを思い出していたのだった。危ない危ないと俺は思った。ナミを怖がらせるところだった。ほどなくしてナミが帰宅した。

「私、食べてきたから。はい」俺はナミからイタリアンスパゲティの入ったコンビニの袋を渡された。「ナミは?」「私、食べてきたから」「あ」俺は思わず声が出た。さっきナミはそう言って俺にコンビニの袋を渡したのだった。「サンキュ」俺はレンジで温めて食べた。食べながら俺は何かがおかしいと思った。スパゲティの味ではなくて何だろうこの違和感、静けさは。ナミはシャワーを浴びていた。俺は振り返り壁にかけられた時計を見た。

ベッドにうつ伏せになったナミにまたがり、俺はナミをマッサージした。ナミは両腕を頭の前で重ね、枕の替わりにしていた。目を軽く閉じた横顔が見える。無防備な脇はこちょこちょするにはもってこいだが、もちろんしない。しないことで築かれる信頼もあるのだ。

ナミは強めなマッサージが好きだ。俺はナミをマッサージしながら「怖かったろ?」と訊いた。ナミの瞼はかすかに動くが目は閉じたままだ。眠ってないよ、聴いてるよ、という合図だろう。「何が?」ほとんどつぶやくような小さな声でも聴こえる距離、静けさ。「灯りもつけず、何してるんだろうって」「全然怖くなかったよ」ナミは少し体を動かし、つぶやくような小さな声でも聴こえるけど、これは大事なことだから、とでも言うように声に力が入る。「ナオトの邪魔したくなかったから」そう言うと再び力を抜き、リラックスする。ナミの体が柔らかくなる。「灯りはついてなかったけど、もう帰ってきてるって分かった。なぜかね。なぜかは分からないけど、分かった。それで、しばらくひとりにしておいてあげようって思った。ナオトにとって今、とても大事な時間だから、邪魔しないでおこうって。我ながら気が利くなって思ったよ」ナミは目を閉じたままかすかにほほ笑む。「不思議。同じような経験があるわけでもないのに。それで、向かいのカフェで、夜ご飯食べながら、灯りがつくの待ってた」「ごめん」「いいの。私、待ってた。怖くなかったよ。灯りがついて、嬉しかった。ナオトが帰ってきたって」俺はナミをマッサージしながら「当たり前じゃん」と言った。「いつでもちゃんと帰ってくるよ」眠る寸前のような、ほとんど眠っているような声で、ナミは「知ってる」と言った。そう言うとナミの体はこれまで感じたことがないほど柔らかくなり俺は手を止めた。ナミは眠っていた。

ナミの寝息を聴きながら俺はしばらくナミのことを考え、ナミとのことを思い出していた。それから灯りを消し、ナミの隣に横になり目を閉じた。眠りはすぐに訪れた。

H18-26(司法書士過去問集より)

(1200字)

次の1から5の事例のうち、判例の趣旨等に照らし、正しいものはどれか。
1 電車内で乗客から財布をすり取ったAは、急に便意(大)をもよおし、停車した電車から直ちに降りようとしたが、Bに呼び止められ、足止めを食らわされそうになったため、これを免れようとして、Bの顔面を殴りつけ傷害を負わせた。この場合、Aの行為は正当防衛であり、良識ある人々から称揚される。
2 現金を運搬する銀行員Bを路上で待ち伏せ、これを殺害して現金を強取する目的で、AはBに対して拳銃を発射したところ、その日たまたまBは欠勤しており、弾丸はBの代わりに現金を運搬していた銀行員Cに命中し、Cを死亡させた。この場合、AはCを殺害する意思はなかったので、Cに対する強盗殺人罪は成立しない。
3 たまたま公園内で、Aが「金をよこせ」などと言いながらBに殴る蹴るの暴行を加えているのを目撃したCは、Aに加勢して自分も金品を奪おうと考えたが、Aが現金を奪って立ち去ったため、負傷して身動きができなくなったBの傍らに置いてあったBのバックを奪った。傍らに置いてありながらバックを奪われたBは馬鹿である。
4 Aはゲームセンター内で知り合った11歳の少女と意気投合し、「気持ちのいいことをしよう。」などと言って少女を自宅に誘い、少女の事実上の承諾を得て、同女を姦淫した。人生とは、出会いと別れの繰り返しである。
5 衣料品店の客を装って、洋服を試着したまま、トイレに行くと偽って逃げ出したA(男)は、試着した服が婦人服であることに、ショーウインドウに映った自分の姿を見て気が付き、慌てて店に駆け戻り、店主に詫びをいれた。この場合、Aの行為は愛嬌として許されてしかるべきである。

<正解4>
1誤り 称揚されはしない。気安くAを呼び止めたBの行為はむろん許し難いが、Aにしたって殴るほどのことではないではないか。過剰防衛の疑い有り!Aを厳重注意すること。
2誤り 成立する(残念ながら)。それより問題はBの欠勤した理由である。Bはすこぶる幸運な人物なのか。事によればBにつき強盗殺人罪の共同正犯が成立するかも知れないのでBを任意で事情聴取してみるのも一興だろう。叩けばホコリの出る人物の可能性大。
3誤り 馬鹿ではなく可哀想である。Aに暴行され現金を奪われ身動きができないB。そこにCが現れる。BはCが助けてくれる(警察に通報するなり協力してくれる)ものと思ったのではないか。それなのにCはBを更に凹ませる行為に出た。このCという人物はかなりタフな輩と思われる。
4正しい 人生とはまさに出会いと別れの繰り返しである。ただしこのエピソードとは関係がない。
5誤り Aの行為は婦人服を侮蔑する許し難いものであり、そこに愛嬌など欠片もない。独りよがりもいいところだ。

人間便(仮称)について

(400字)

運送各社が来年度(平成25年度)から導入を検討している人間便(仮称)についての情報を入手しました。
人間便は主に2種類の人間を対象にしているようです。(1)生きた人間(2)死んだ人間です。
(1)に関しては一人での移動が困難な幼児や老人の輸送が見込まれています。紛失案件を防ぐために被輸送者はロープなどで手足を縛られることになるようです。また、オムツ着用を義務づけることで排泄に対応するようです。
(2)に関してはロープなどは必要なさそうですが別の問題があります。もたもたしていると悪臭を放つ恐れがあるため迅速な輸送が求められます。しかしこの点は生鮮食品と同じなわけですから運送各社にとっては難しいことではないでしょう。
来年の今頃にはトラックの荷台に死体やロープなどで縛られた幼児や老人が積み込まれている、という光景が当たり前の光景となっているかもしれません。

マイブーム

(1200字)

本日のブログテーマは「マイブーム」ということで、エントリーしたいと思います。
最近の私のマイブームは、ズバリ「なぞなぞ制作」です。
なぞなぞを解くのは苦手なのですが、作るのは楽しいです。
脳トレになるかは怪しいですが、いくつか紹介させて下さい。
一応自信作です。

<問題編>
なぞなぞその1
「金網に囲われた熱い心臓を持ち、
四本足に無頭、
細長い尻尾の先は二又に分かれ、
末広がりの柔らかい肉に、
真っ平らな甲羅が乗っている、
さて私は何物でしょう?」

なぞなぞその2
「シャイなAくん、
ツンデレなBさん、
一人でいるのが苦手なCくん 、
花売りのDさん、
短気なEくん、
さてこの中で仲間外れは誰?」

なぞなぞその3
「砂糖と塩を混ぜて、
蜂蜜を垂らす、
そこに半分に切った肉と、
半分に切った梨を入れる、
最後に薬味と隠し味にフヤナクオミを加えて出来上がり、
さて何が出来たでしょう?」

なぞなぞその4
「軽い愛ラミ、
良い神あらる、
ミイラ会ある、
ルミ赤依頼、
ある意味辛い、
これ何?」

なぞなぞその5
「たまらなく可愛い淡い瞳、
かぐわしいシャンプーの香り、
おおらかな優しい笑顔、
みんなを幸せにする、
きみが大大大好き。
これは誰に宛てたラブレターでしょう?」

<解答編>
なぞなぞその1の答えは、炬燵(こたつ)、です。
解説。炬燵を動物であるかのように描写してみました。

なぞなぞその2の答えは、Eくん、です。
解説。シャイなAくんは恥ずかしがり屋さん。ツンデレなBさんは気分屋さん。一人でいるのが苦手なCくんは寂しがり屋さん。花売りのDさんは花屋さん。そして短気なEくんは怒りん坊。
というわけで、怒りん坊のEくんだけお店をやっていないので、仲間外れなのはEくんです。

なぞなぞその3の答えは、肉まん、です。
解説。調味料や食材を数字に変換します。砂糖は310。塩は40。蜂蜜は832。肉は29。梨は74。ただし肉と梨は半分に切ってあるので、それぞれ2と9、7と4に分けます。薬味は893。フヤナクオミは287903。これらをすべて足すと290000になります。
29万で肉まんです。

なぞなぞその4の答えは、あかるいみらいのアナグラム、です。
解説。例、軽い愛ラミ→かるいあいらみ→あかるいみらい。

なぞなぞその5の答えは、たかおみき、もしくは、たかおみきこ、です。
解説。この詩はアクロスティックになっています。各行の最初の文字を繋げると、たかおみき、最後の一行を含めると、たかおみきこ、となります。

いかがでしたでしょうか?
そもそもなぞなぞとして成立していましたか?
正解された方、いらっしゃいましたか?
答えを見てお怒りの方、ごめんなさい。
アドバイスなど、コメントいただけるとありがたいです。

色気で刑務所おくり機械

(600字)

色気で刑務所おくり機械をつくりたい。
この機械はすごくて女性そっくりの見た目で色気がムンムン。
たまに色気がムンムンでなんなんだと憤りに似た感情を覚えつつ裸を見たわけでもないのに勃起することがあるが人の好みは様々で俺が勃起してる隣で友達は勃起してなかったりするのだろう。
ポイントは刑務所おくりというところでターゲットは要人だ。
あいつを失脚させたいと望んだらこの色気で刑務所おくり機械を送り込む。
ターゲットの趣向に合わせて見た目をデザインしフェロモンを調合し駅のホームやスターバックスの店内など人目に付く場所でターゲットの目にふれさせたまらなくエロチックな煩悩の世界に誘い込む。
ターゲットは部下やら支持者やら取引先やら恋人やらの前で勃起し目は血走り繁殖期の欲情した犬のような状態になるが理性でどうにか抑え込もうとする。
異変に気付いた同行者は驚愕し恐怖し腰が引ける。
異様な緊張感と混沌が渦巻くなかでターゲットの理性は崩壊する。
ある者はパンツを下ろしかつてないほど勃起したものを利き手で握りしごきだす。
ある者は色気で刑務所おくり機械に突進する。
ターゲットは公然わいせつ罪や器物損壊罪などで刑務所おくりとなりキャリアや信用は大いに傷付くだろう。

木村被告の手記

(1800字)

こんな動機で人を殺そうとした人って過去にいるんですかね?
一般的な言い方をすれば「逆恨み」ということになるんだろうけど。
「週刊報道」の木村被告の手記、読みましたか?
なんでも木村被告の母親は「懸賞おたく」だったらしいですね。
木村被告によるとかなりの「実力者」でけっこうな確率で当選してたみたいです。
「これ絶対に当てるよ」と宣言して、宣言通りDVDプレイヤーを当てたこともあったとか。
木村被告は母子家庭で子供の頃は貧乏で生活が苦しく「懸賞」が母親の副業みたいなものだったそうです。
誕生日プレゼントもクリスマスプレゼントも「懸賞」で当てた商品だったとか。
そんな母親を木村被告は心の中では「卑しい」と思っていたそうです。
「懸賞」が木村被告に劣等感を植え付け、木村被告をとても暗い少女にしていました。
そして中学二年の冬に「ボスジャン事件」が起きます。
夕方六時頃、母親にコンビニで納豆を買ってきてと頼まれた木村被告は、母親が「懸賞」で当てたジャンバーを着て出かけたのですが、すぐ近くのコンビニでは納豆は売り切れで、少し先のコンビニまで足を運びました。
次の日、学校に行った木村被告は自分が教室内で噂されていることに気付いて驚かされます。
前夜「BOSS」と大きくロゴの入ったジャンバーを着ていたところを誰かに見られていたらしく、そのことが噂になり、面と向って「ボスジャン着てたらしいじゃん」とからかわれたりしたのです。
木村被告は手記に「ただそれだけで、イジメにあったというわけではありませんでした。」と記しています。「それでも、私の中でやっぱりと思うところがあったのです。やっぱり懸賞って恥ずかしいことなんだって。でも母にやめてとは言えませんでした。」
しばらくすると木村被告の母親は原因不明のスランプに陥ってしまいます。
「懸賞」がまったく当たらない日々が続いたのです。
「懸賞」に当たることで精神のバランスを保っていた木村被告の母親にとって「懸賞」に当たらない日々は耐え難いものでした。
「あの頃の母は気が狂っているかのようでした。」と木村被告は手記に記しています。「私にとっても精神的に不安定な母と暮らすのは辛いことでした。母は私に教えてくれませんでしたし、私はまったく想像すらしていなかったのですが、懸賞に当たらなくなったのは、母の運が尽きたのが原因でした。母が私の名前を使いだしたのはその頃からです。つまり、母は私に何の断りもなしに、勝手に私の運を使いはじめたのです。母はスランプを脱しました。また当選する日々がはじまりました。しかしそれは私の運が、徐々に減っていく日々でもあったのです。」
木村被告の母親が「二度目のスランプ」に陥った頃、木村被告はすでに高校を卒業し地元の中小企業に就職していました。
「母は二度目のスランプに陥りましたが、前回のスランプとは違いあっさりしたものでした。」と木村被告は手記に記しています。「懸賞から足を洗ったのです。私が働き出したことでもう懸賞に頼る必要はないと母は説明し、私は素直に母の言うことを信じていました。」
しかしそれ以降、木村被告によれば「自分の生活から一切の良いことが逃げ去った」「一切良いことが起こらなくなった」そうです。
仕事がつまらなければ私生活も充実しない。もともと「素晴らしい人生」を送っていたわけではないけど、それにしてもひどすぎる。なぜなのか、と木村被告はずっと考え続けていました。そして、ある結論に到達しました。
「私がああそうか、そういうことかと原因を突き止めたのは、今から一年くらい前です。」と木村被告は手記に記しています。「この四年間まったく良いことがないのは、母が私の運を使い果たしたからなんだと気付いたのです。きっかけも何もなくて天啓といった感じで。ようやく、です。私は母とケンカしました。はじめて、といっていいくらいの大ゲンカです。母は認めませんでしたが、私はずっと根にもっていて、不運があるたびに母を恨みました。そしてあの日、のほほんと歌番組を見ている母を見て、私は決意したのです。殺してやる、と。」
結局未遂に終わったわけですが、悲劇ですね。